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人生のためになる言葉があったりなかったり。
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「てめぇ、くだらねぇ失敗しやがって。拘流の遮断くれぇ、初歩中の初歩の仕事だろぉーが!!」
「菓子ばっか喰ってて、気が利かねぇからだろ。」
「通信技術開発局のお荷物だからな。」

散々な言葉を浴びせられて

「ス・・イ・・・マセン・・・。うっ・・・。」

リンの瞳から涙がこぼれ落ちる。
拘流遮断の申請を受けて、確かにシステムを作動させたのだ。
けれども、拘流は遮断されず、そればかりか任務中に断界に拘突が現れ、危険に晒された三番隊からは抗議が寄せられていて、結局はリンのミスだと片づけられそうだ。

(ちゃんと仕事をしたハズなのに・・・。)     

高い評価を求めているワケではない。
けれども、当たり前の業務すらこなすことが出来ないと、誹られるのは辛い。
頬を涙が伝い、足下に落ちる瞬間

「まぁ、待て。本当に壷蔵のせいばかりとは言えねぇダロ?」

阿近がリンと、他の局員との間に入った。

「ナンダヨ阿近。リンを庇うのか?」

鵯洲はイライラした調子で、飛び出しがちな目玉を更に剥いている。
他の局員達も、冷たい雰囲気だ。
己の不手際ならば仕方のないことだと、リン自身も納得はしている。
“変わり者の集まり”
と称される技術開発局だが
“頭脳集団”
としての誉れも高い。
知識・研究・頭脳・技術
それぞれの分野での、際を競い合っているのだから、三番隊からの抗議は、技局全体への侮辱であると捉えている向きもあるのだ。

「コイツを吊し上げたって、拘流遮断の失態を帳消しに出来るワケじゃねぇダロうが?それより、使えない新人でも完璧に仕事ができるように、システムの再構成を考える方が、建設的だろ。」

阿近の言葉に、その場の雰囲気が落ち着きを見せた。

「いいか?基本的にはだ、俺たちが開発する最新技術を使うのは、死神達だぞ。死神の全員が、俺たちと同じ頭脳や技術を持ってるとは、オマエらだって思ってねぇだろ?そのへんも考えながら・・・仕事しろ。」

そう言うと、懐から煙草を取り出し火を付けると、深く吸い込み、長く吐き出した。
ソレを潮に、その場の全員が、ガヤガヤとし始める。

これ以上、どう簡単にするンだ?
でも、あたし達に使えるからって、死神が使えるワケじゃないっていうのは、確かよねぇ。

三々五々、言い合いながら、解散していく。
全員が持ち場に戻り、その場にリンと阿近だけになった。
リンが、背の高い白い背中を涙目で見つめていると、振り返り

「原因を今日中に報告しろ。」

それだけ言って、阿近もリンの前を去っていった。

目を合わせることは、できなかった。

***

今日中と言われたが、明け方まで何度も、システムの再検索をし、再機動をし、ついには再設定迄したのだが、結局、原因は分からなかった。
それでも、全くナニも報告しないわけにはいかないし、24時間365日、仕事をしていると言われている阿近だから、もしかしたら起きているかもしれないと思い、副局長室へと足をのばす。
ノックをしようとして、聞こえてきた声に、手が止まる。
艶めかしい衣擦れの音と
笑い声と

「三番隊の隊士の皆さんはぁ、重傷者ナシですぅ。」
「そうか。」

シポッ

煙草に火を付ける音がして

「寝煙草はぁ、危ないですよぉ。」

おっとりとたしなめる声に

「この一服が、たまらなく美味ぇんだ。」

自分には向けられることのついぞナイ、優しい声。
阿近の愛人が、在室しているのを知る。

「拘流を遮断したのに、拘突まで現れたんですよねぇ?そんなコトって、あるんですかぁ?」

のんびりとした問いに

「ああ。拘流は自然発生するもんだから、俺達はソレを制御するべく、システムを開発したが、その中で拘突を呼び寄せようと思えば、できないこともない。」

そう言った後、しばし沈黙があり

「・・・嫌なカンジがするな。誰かがシステムに干渉してるのか・・・。」

阿近が唸るように呟いた。
その後は会話がとぎれていたから、リンはそっとその場を立ち去ろうと、背を向けたところで

「どうした?ナニ見てる?」

阿近の声に、去りかけた足が止まる。

「ウフフ。見惚れてるんですぅ。」
「・・・俺をか?」
「はい。知的な横顔がぁ、素敵でぇ、惚れ惚れしてましたぁ。」
「オマエなぁ・・・。もう寝ろ!!」

どうやら照れているようだ。

「はぁい。」

ソレを機に、リンはノロノロと、足を踏み出す。

瞳からこぼれ落ちる雫を、拭うこともせずに。
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